私は、生命保険は掛け捨てタイプが保険料を節約できて得と思っていました。
ところが、先日、何気なくネットニュースを見ていると、掛け捨てよりも解約返戻金がもらえる貯蓄型が有利と解説されていました。その理由は、所得税や住民税の生命保険料控除の金額が掛け捨てタイプよりも多くなるからです。
なるほどー、と思いながら、今加入している貯蓄型の生命保険も悪くないなと考えていたのですが、ふと、「でも、計算してみないとわからないぞ」と思い、ちょっと調べてみることにしました。
65歳までの払込で500万円の保障
調べたのは、死亡した場合に500万円の保険金が受け取れる生命保険です。
保険料の払い込みは65歳までにしました。65歳以降は、仕事を辞めて年金で生活することを想定している人が多いでしょうからね。
保険の加入年齢を40歳とした場合、いくつかの保険会社の商品を比較したところ、掛け捨てと貯蓄型の年間の保険料は、概ね以下の通りでした。
- 掛け捨て=約22,000円/年
- 貯蓄型=約185,000円/年
両者の年間の差額は163,000円ですから、25年間の払い込みだと、4,075,000円の差となります。
果たして、節税額を考慮した場合に貯蓄型は、この差を逆転できるのでしょうか?
掛け捨ての25年間の保険料と節税額
まず、掛け捨ての場合の節税額を計算してみましょう。
節税できるのは、所得税と住民税ですが、ここでは所得税だけを考慮します。また、所得税の税率は20%とします。
2021年3月の確定申告を前提とすると、生命保険料控除は最高40,000円です。掛け捨てだと22,000円しか保険料を支払っていないので、40,000円の生命保険料控除は受けられず、以下の計算式で計算した金額が生命保険料控除となります。
- 生命保険料控除
=支払った保険料×0.5+10,000円
=22,000円×0.5+10,000円
=21,000円
次にこの21,000円に所得税率20%をかけた金額が節税額になります。
- 所得税の節税額
=21,000円×20%
=4,200円
したがって、節税額を差し引いた純粋な年間の保険料は以下の金額になります。
- 節税額を差し引いた純粋な保険料
=22,000円-4,200円
=17,800円
よって、掛け捨てタイプの生命保険の場合、25年間の保険料は445,000円となります。
貯蓄型の25年間の保険料と節税額
次に貯蓄型の節税額を計算してみましょう。
生命保険料控除は、年間の保険料が80,000円以上になると、40,000円になります。
貯蓄型の保険料は185,000円なので、生命保険料控除は40,000円です。
したがって、節税額は8,000円になります。
- 所得税の節税額
=40,000円×20%
=8,000円
したがって、節税額を差し引いた純粋な年間の保険料は177,000円になります。
- 節税額を差し引いた純粋な保険料
=185,000円-8,000円
=177,000円
よって、貯蓄型の生命保険の場合、25年間の保険料は4,425,000円です。
解約返戻金がいくらになるか
以上より、貯蓄型の25年間の保険料は、掛け捨てタイプよりも3,980,000円高くなります。
- 貯蓄型と掛け捨ての保険料の差額
=4,425,000円-445,000円
=3,980,000円
もしも、貯蓄型の生命保険を65歳に解約して、解約返戻金が3,980,000円よりも多ければ、貯蓄型の生命保険が有利となります。
上の例で使った貯蓄型の生命保険は、無配当終身保険の解約返戻金よりも70%少ない解約返戻金とすることで、毎月の保険料を安くしている商品なので、どんなに多くの解約返戻金が戻ってきても、3,500,000円までです。詳しい解約返戻金の額はわかりませんが、65歳の払込満了とともに解約した場合には、3,000,000円程度しか戻ってこないのではないでしょうか。
仮に3,500,000円の解約返戻金が戻ってきた場合でも、掛け捨てタイプと比較して、25年間で480,000円多くの保険料を支払うことになるので、貯蓄型が有利とは言えませんね。
- 解約返戻金-25年間の保険料の差額
=3,500,000円-3,980,000円
=-480,000円
ここでは、住民税の生命保険料控除を無視したので、これも考慮するとどうなるかも計算しておきましょう。
住民税の場合、生命保険料控除の最高額は28,000円、税率は10%ですから、年間で最高2,800円の節税効果を受けられます。したがって、25年間の住民税の節税効果は、70,000円です。
- 25年間の住民税の節税効果
=2,800円×25年
=70,000円
480,000円から70,000円を差し引いても、まだ410,000円掛け捨てタイプが有利になりますね。
保障額を増やせば増やすほど、貯蓄型と掛け捨てタイプの保険料の差が開いていくので、さらに貯蓄型は不利になっていきます。保障額を少なくした場合や加入年齢を低くした場合には、両者の差が縮まってくるかもしれませんが、計算していないのでわかりません。
これから生命保険に加入しようと検討している方は、保険のプロに相談できるお店で、掛け捨てタイプと貯蓄型のどちらが保険料が安くなるかを計算してもらうと良いでしょう。年収によって節税額に差が出ますから、細かく計算すれば貯蓄型が有利になる場合もあるかもしれませんからね。
とりあえず、生命保険は掛け捨てが有利だと再認識できました。
なお、生命保険や医療保険を検討する場合は、公的な支援制度についても事前に調べておきましょう。医療費が高額になっても、自己負担額に上限があるので意外と少額の医療費負担で済むことがありますからね。
コメント