生命保険に加入するとき、多くの人が満期になるとお金がもらえる保険を選びます。そして、満期になってお金がいくらか返ってきたとき、生命保険に加入していてよかったと思うはずです。
でも、その満期返戻金は生命保険として支払ってきた掛金が返ってきているのではありません。わかりやすくいうと、銀行の定期預金が満期になって利息と一緒に戻ってきたのと同じなのです。
わざわざ保険会社にお金を預ける必要はない
多くの生命保険商品では、万が一の事態に備える保険に貯蓄部分が組み合わさっています。
例えば、毎月5,000円の保険料を支払っている生命保険の場合、2,000円が掛け捨てで3,000円が貯蓄といった感じです。掛け捨てと貯蓄の比率は、保険商品によって異なります。
よく掛け捨てだと、満期になってもお金が戻ってこないから損だと言われますが、これはまちがっています。上の例だと、掛け捨ては保険料2,000円の生命保険に加入していただけです。つまり、毎月の保険料を3,000円節約できているのです。満期になってお金が戻ってくる保険でも、保険料の一部が掛け捨てになっていることを理解しておきましょう。
そして、満期になってお金が戻ってくる保険は、単なる貯蓄にすぎないのですから、他に資金の良い運用先があるのなら、わざわざ保険会社にお金を預ける必要はありません。万が一の事態に備える保険と資産形成は別と考えましょう。
リスク分散を意識する
株式投資の世界では、「一つのバスケットにすべての卵を盛るな」といった格言があります。
もしも、バスケットを落としてしまった時、そこに盛っていた卵は全て割れてしまいます。だから、万が一バスケットを落としても、すべての卵が割れないようにするために複数のバスケットを用意して卵を別々に保存しておけば、全滅を防止できます。
持っているお金を1銘柄の株式に投資すると、その会社が倒産した場合、全財産を失います。だから、株式投資の際は、複数銘柄に投資してリスクを分散しなければならないというのが、この格言の意味です。
これは、保険についても同じです。
子供が成長する前に不慮の事故で、夫や妻が亡くなった時に子供の生活費を工面するために買うのが生命保険です。
当然、子供が成長して大人になった時には、保険に加入し続ける必要はありません。そして、満期になった時にお金が戻って来なくても問題ありません。子供が大人になるまでの生活費のねん出が目的なのですから、子供が成人するという目的を達成したら生命保険は解約しても良いのです。
リスク分散を考えるのであれば、生命保険は1社とだけ契約すべきではありません。1,000万円の保障をつけるのであれば、500万円ずつ2つの保険会社の生命保険に加入した方が、どちらかの保険会社が倒産した場合でも半分の保険は生き残ります。
もちろん、加入する生命保険は掛け捨てにすべきです。貯蓄まで同じ保険会社に任せていると、倒産した時に保険も貯蓄も失いますからね。
資産形成は自分で考える
満期になってお金が戻ってくる生命保険に加入するのは、一家の資産形成を保険会社に丸投げしているのと同じです。
定期預金に預ける場合、期間を何年にするか、預金額をいくらにするかは自分で決めますよね。でも、生命保険の場合は、あらかじめ決められたパッケージ商品を買うことになるので、柔軟に貯蓄額を決められるわけではありません。
お金に余裕がある月は多めに預金する。反対にお金が足りない時は定期預金を解約する。
こういった柔軟な資産形成をしたいのであれば、生命保険会社に毎月一定額の保険料を払い続けるべきではありません。また、資産形成には預金だけでなく、国債や株式といった選択肢もありますが、生命保険の場合は定期預金とほとんど同じで選択の幅が狭いといったデメリットもあります。
このように考えていけば、生命保険は掛け捨てにするのがおすすめです。生命保険料控除を受けられるからと言って貯蓄型の生命保険を選ぶ必要はありません。
資産形成まで自分で考えるのは面倒だと思うのなら、貯蓄もできる生命保険に加入すれば良いでしょう。でも、それは、複数の卵を一つのバスケットに盛っているのと同じだということを忘れていはいけません。
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